【代表インタビュー】トライプレックス株式会社 代表取締役 泉 拓磨

表面的なスキル習得を超えて。人間の成長構造を科学的に捉えたアプローチ
英語学習、ビジネススキル、投資の知識—世の中には無数の学習コンテンツが溢れています。しかし、「同じ内容を学んでも、成果を出す人と出さない人がいるのはなぜか?」という疑問を持ったことはないでしょうか。
この根本的な問いに向き合い続けてきたのが、トライプレックス株式会社の代表取締役である泉 拓磨さん(以下、泉さん)です。泉さんは、総合商社から教育業界に転身し、Webマーケティングの領域で成果を重ねた後、MBOという形で2022年に同社を設立しました。
独自の教育アプローチで従来の教育コンテンツとは一線を画す事業を展開している泉さんに、その思いの源泉と独自の事業モデルについて伺いました。
プロフィール

トライプレックス株式会社
代表取締役 泉 拓磨
趣味
旅行、ワイン、散歩、時計収集、瞑想、ギター、ボクシング観戦
尊敬する人
盛田昭夫氏(ソニー)、柳井正氏(ユニクロ)、辻本憲三氏(カプコン)、トミー・エマニュエル
座右の銘
「自己信頼という原理原則によって勝利せよ」ラルフ・ウォルド・エマーソン
学生が読むべき本
「自己信頼」ラルフ・ウォルド・エマーソン
経営者におすすめの本
「マネジメントへの挑戦」一倉 定、「ハイパワー・マーケティング」ジェイ・エイブラハム、「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」ピーター・ティール
人生で一番熱狂したこと
自分がした仕事が成果につながったと実感できたときに熱狂します。
「知識やスキルだけでは変わらない」—人間を構造的に捉える独自の視点

人の成長を根本から考える教育コンテンツ事業
小川:御社の事業内容について教えていただけますか?
泉さん:当社は、お客様の人生のあらゆる悩みを学びによって解決することをミッションとしています。人間の悩みにはお金、人間関係、健康という3大悩みがあると言われていますが、それらをテーマにさまざまな教育コンテンツ事業を展開しています。
当社の強みはWeb上でのマーケティングです。それを武器にオンライン英会話スクールや、最近では生成AIのスクール、AIを活用した学習サポートツールなどの開発も行っています。
コンテンツを持っている会社や本の著者、出版社と組んで、著者のオンラインコンテンツを一緒につくっていくプロデュース事業も手がけています。
小川:他社との違いや特徴について聞かせてください。
泉さん:「人の成長」を根本から科学的に捉えているところが最大の特徴です。
今、世の中にはいろんな学習コンテンツが溢れています。英語学習の手段はたくさんあるし、ビジネススキルでコーチングを学ぶのも、投資やお金の勉強も同様です。
ただ、同じものを提供しても、ある人は成果が出るけれど、ある人は出ないことがよく起きます。これがなぜ起きるのかということが、実はすごく重要だと考えています。そこで私たちはこの要因について人間の構造で捉えることによって分析しているんです。
信念と思考習慣が成果を左右する。コーチング理論を取り入れた学習設計
小川:具体的にはどのような構造として捉えているのでしょうか?
泉さん:基本的に多くの人は知識やスキルを学ぶことに一生懸命になりますが、人間の構造において重要なのは、知識やスキルのベースになっている思考習慣や信念なんです。これはコーチングの世界では当たり前に語られる概念です。
たとえば、ある人が英語を話せないと言ったとき、同じ授業を受けても話せる人と話せない人がいます。話せない人の根本的な原因は、英語を学ぶ手段だけの問題ではありません。
実は、人間のパフォーマンスに最も大きな影響を与えるのは、「自分はどういう人間だ」という自己認識や、「英語は難しい」「簡単だ」といった物事に対する信念なんです。知識やスキルよりも、こうした内面的な要因の方が成果を左右します。
当社では、この人間の成長構造を理解した上で、学習プログラムを設計しています。
商社からマーケティングの世界へ。熱狂と挫折を経て辿り着いた使命

インドネシア体験が培った多様性への理解と戦略的キャリア構築
小川:そうした独自のアプローチを確立されたご経験について、泉さんご自身のこれまでのご経歴も含めて教えていただけますか?
泉さん:生まれは東京で、小学校時代は千葉県浦安市のディズニーランドの近くに住んでいました。中学から父親の転勤でインドネシアのジャカルタに引っ越し、6年間過ごしました。
中学は日本人学校でしたが、高校は日本人学校がなく、インターナショナルスクールに入学。そこで算数、理科、体育といったすべての授業を英語で受けるという3年間を経験しました。言語の壁を乗り越えて学ぶ大変さを実体験したことが、現在の学習者の気持ちを理解する上で活かされていると思います。
社会人としては、最初に総合商社に入ったのですが、より起業に必要なスキルを早く身につけたいと感じ、2年で転職を決断しました。
その後、フルコミッション制の営業に挑戦しました。売らないとお給料がもらえない仕事です。ちょうど研修関係の会社だったので、そこで教育学習に興味を持ちました。3年ほどそういうセールスを経験する中で、対面営業の限界を感じ、Webマーケティングに強い興味を持つようになったんです。
マーケティングへの熱狂と予想外の成果が生む循環

小川:そこでマーケティングとの出会いがあったのですね。
泉さん:学習コンテンツをオンラインで販売している会社に、未経験からアルバイトで入社しました。そこでマーケティングの面白さを実感し、3年ほどでその会社の売り上げの半分を担うまでになりました。
プロモーションやマーケティングは本当に熱狂そのものです。「こうしたら売れるのではないか」というアイデアを考えるのが楽しいんです。自分で考えたコンセプトが当たるか当たらないか、毎回ドキドキします。当たると本当に面白い。予想外の売り上げが立つこともあります。
さらに嬉しいのは、お客様が満足して学んでいる姿を目にしたときです。自分の考えたものが人に喜びを与えている。マーケティングって本当にそういう仕事だと思っているので、いつも面白いと感じています。
小川:そうした熱狂的な取り組みの中で、特に大変だった経験はありますか?
泉さん:ある商品をローンチするときの準備期間が特に大変でした。半年間ずっとプロモーションをつくり続けて、デザイナーや動画編集者、さまざまなクリエイターから上がってくる制作物をチェックしたり、修正指示を出したりしていると、時間がいくらあっても足りません。
本当に半年間、毎日3〜4時間睡眠で土日もないという生活を何回も経験しました。でも、それが形になって爆発的に売れたりすると、すごくやってよかったと思えるんです。
小川:それでも続けられた理由はどこにあると思いますか?
泉さん:まず単純に、売れたら結果が出るということです。マーケティングは結果が明確に出るので、それが楽しい。それと、自分自身が目指しているところがまだ先にあるので、そこに少しでも近づきたいという気持ちがありますね。
MBOという決断から現在の会社設立へ
小川:独立からMBOを経て、現在の会社設立に至るまでの経緯を教えていただけますか?
泉さん:独立後、ある会社とプロモーションの契約を結んだところ、それが非常にうまくいき、継続的な事業に発展しました。規模が大きくなると組織化が必要になり、個人事業主でありながら採用や組織づくりを担当することになったんです。
チームが20人ほどになったとき、「結局自分が経営しているのと同じではないか」と思い、3分の1出資して代表に就任し、最終的に残りの株式も買い取って現在の会社を設立しました。
業界課題への強い使命感。質の向上を目指した取り組み

玉石混交の情報商材市場への問題意識
小川:そうしたご経験を積まれる中で、業界の課題について感じることはありますか?
泉さん:この業界、教育学習コンテンツは課題だらけです。
個人でも誰でも販売できるため、製造にコストがかからない。その中で何が良いか悪いかが表面的には分からないんです。スマホなら実物をみてデザインや機能で判断できますが、学習コンテンツは無形商材なので、実際に使ってみないと判断できません。 良いものも悪いものも混在していて、正直にネット上で手に入るもののほとんどは質が高くないと思います。
私たちは、そういう課題を解決したいと思っています。日本の出版物についても質の向上が必要です。英語話者が世界的に多いことから、英語圏では良質な情報が豊富に生まれますが、日本語の情報は量的にも質的にも限られているのが現状なんです。
日本で生まれている多くの本は短期的な商業性を重視したもので、2〜3年後には価値を失うような内容が多い。そういうものの質を高めていかないと、日本人の知識レベルが下がっていく一方だという問題意識を持っています。
これらの課題を含め、業界全体の質を上げるにはどうしたら良いかを常に考えて事業をやっています。
教育のリーディングカンパニーを目指して。成長環境と今後の展望

質の高い教育コンテンツを生み出すための組織づくり
小川:そういった中で、業界全体の質を高めていくために、組織としてどのような体制や仕組みを整えているのか教えてください。
泉さん:まず、マーケティングという普遍的にビジネス成功に必要なスキルを徹底的に磨く機会をつくっています。
世の中、良いものがあれば売れるわけではありません。良いものをどうお客様に届けるかで知恵を絞る必要があります。私たちは大小さまざまな事業に関わってマーケティングを磨いてきているので、実務面からコンセプト設計、戦略策定といった上流工程まで一貫して経験できる環境があります。
やる気のある方には徹底的に任せられる環境もあります。たとえば、入社1年半ぐらいの20代後半の社員でも、月1億円近い広告費の運用を任せているケースもあります。
小川:未経験の方でもそうした環境で働けるのでしょうか?
泉さん:はい。基本的に社員の教育や学習にかなり投資する会社です。1人当たり50万円するような研修にも出してもらえますし、知識や情報がいかに成果を変えるかをよく理解しているので、教育に対する投資は惜しみません。
また、社内では教え合う文化があり、人間関係上のストレスが少ないのも特徴です。最初の3か月間の計画をしっかり立ててオンボーディングを行うので、その人のペースに合わせて成長していける環境があります。
目標を持った人材と描く未来のビジョン
小川:これから入社する人に一番求めることは何ですか?
泉さん:明確な目標や夢を持ち、それを叶える手段として当社を選んできてほしいです。
目標を持った方は、ある一定期間、仕事に打ち込む時期が必要になります。当社には、そうした志を持つ方が、あらゆるビジネスに必要なマーケティングを実践しながら身につけていける環境があります。
小川:今後どういった会社にしていきたいかという展望を教えてください。
泉さん:日本で学習や教育コンテンツといえば、この会社だなという存在になっていきたいです。服を買おうと思ったらユニクロを一番最初に思い浮かべるのと同じように、教育分野においてはそういう会社になっていきたい。
直近ではAIを活用した学習サービスの開発に力を入れており、中長期的には、これらをサブスクリプション形式で提供し、100万人のユーザー獲得を目指しています。そして、最終的には学習に関わるあらゆる分野において、日本で一番良いものを提供する会社になっていきたいと考えています。
無限の可能性を信じて。限界を突破する思考法

科学的視点からみた人間の潜在能力
小川:最後に、若い読者の方に向けてメッセージをお願いします。
泉さん:基本的に人にできることの限界はないと思っています。私自身も20代の頃は、基本的に自分の限界を決めつけて、物事を考えがちでした。「自分は何が向いていて、何に向いていないからこれをやろう」という消去法で選択していたんです。
でも、そのような「向いている」「向いていない」の考え方は、ほとんど自分の思い込みなんです。過去にたまたまの経験で自分に対してつくってしまったセルフイメージ、要は信念ですね。「自分はこういう人間である」という信念にもとづいて未来を描きがちですが、そうした過去の思い込みに縛られることなく、本当はもっと大きな可能性を誰もが持っていると思うんです。
小川:「自分には向いていない」という思い込みを超えて挑戦できるようになるには、どうすればよいのでしょうか?
泉さん:たとえばDNAで言うと、いわゆる天才と言われる人たちと普通の人たちとのDNAの違いで、決定的な差はまだみつかっていません。つまり、天才になる遺伝子は分からないんです。
また、人間はその持っている能力の10%程度しか使っていないと言われています。フル活動したら人間が一瞬で餓死してしまうぐらいのエネルギーを使うらしく、普段は結局セーブしている。でも火事場の馬鹿力のように、すごい力が短時間発揮できることってありますよね。
人間は発揮していない能力の方がすごく大きくて、DNA的にはほとんど誰でも変わらず、発揮していない能力が90%あると考えたとき、大きなパフォーマンスを残している人とそうでない人の違いは、単純にその残りの90%をどのぐらい使えるかという問題です。
だから科学的な側面から、自分を過小評価する方が、実はあまり科学的ではないということに気づいてもらうのが第1歩だと思います。
小川:具体的に何から始めれば良いでしょうか?
泉さん:技術的な話をすると、自分自身との会話の内容を変えることです。
人間は1日3万回ぐらい自分自身と対話すると言われているのですが、その内容がポジティブかネガティブかで、その人の持つエネルギーに大きく影響します。ほとんどの人はネガティブな方が多いんです。
頑張っている人をみて「なんでそんなに頑張れるのか」と思うかもしれませんが、おそらく頑張っている人は自分の中で自分と良い会話をずっと続けているので、エネルギーがあるんです。そうすると行動的になるし、自信があるから思い切った行動もしやすくなります。
まずネガティブな会話をやめて、極力自分自身と良い会話をする。できる方向の会話をしていくことが積み重なると、大きく変わります。
私は、こうした考え方で日本全体も変わっていけると信じています。今の現状でそれを信じられていなかったとしても、そういう可能性を一緒に目指して、最大限の未来を一緒に描きながら仕事していきたいという人に、ぜひきてほしいと思います。
会社概要
会社名 | トライプレックス株式会社 |
HP | https://tri-plex.co.jp |
設立 | 2022年9月 |
事業内容 | 教育コンテンツ事業 運用型広告事業 Webマーケティングコンサルティング事業 |
採用情報 | https://tri-plex.co.jp/recruit.html |