【代表インタビュー】株式会社USEN-ALMEX 代表取締役社長 坪井 将之

危機を乗り越え、テクノロジーとホスピタリティで社会課題を解決する経営哲学
USEN&U-NEXT GROUPの株式会社USEN-ALMEXは、「テクノホスピタリティを世界へ」を理念に掲げ、ホテル・医療機関・レジャー施設などに向けて、自動精算機やチェックインシステム、業務管理システムなど多岐にわたるソリューションを提供しています。坪井 将之代表取締役社長(以下、坪井さん)は同社で30年以上のキャリアを積み、2023年に代表取締役社長に就任しました。
バブル崩壊直後の就職氷河期に社会人としてのスタートを切り、リーマンショック時の経営危機も乗り越えてきた坪井さん。「出会いこそが、自分のキャリアの宝、財産」という信念のもと、チームワークを重視した経営と、最先端の技術で社会課題を解決する姿勢を貫いています。
人手不足やデジタル化が進む現代において、テクノロジーの力で業界のホスピタリティを支え、より良い社会を実現したいという熱い思いについてお話を伺いました。
プロフィール

株式会社USEN-ALMEX
代表取締役社長 坪井 将之
趣味
少年野球チームの監督業
尊敬する人
堀場 雅夫さん(堀場製作所創業者)、稲盛 和夫さん(京セラ・第二電電創業者)
座右の銘
出会いこそが、自分のキャリアの宝、財産
学生が読むべき本
「ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」」川村 隆
経営者におすすめの本
「経営12カ条 経営者として貫くべきこと」稲盛 和夫
人生で一番熱狂したこと
リーマンショックのような逆境など、立ちはだかる壁が高ければ高いほど、熱狂が掻き立ちます
バブル崩壊からリーマンショックを乗り越えた30年 「人」が財産の企業哲学

「大手の歯車より小さな会社で力をつけたい」就職氷河期に下した決断
西畑:まずは、入社されてから今日に至るまでの道のりをお聞かせいただけますか?これだけ長く一つの会社で活躍されてきた経験は、今の若い世代にとっても貴重なお話だと思います。
坪井さん:32年前、22歳のときに入社しました。当時はバブル崩壊直後で、就職活動は非常に厳しい時代でした。「日本はモノづくりの国だ」という思いがあり、メーカーを中心に就職活動をしていました。大手企業からも内定をいただきましたが、最終的には当時まだ上場もしていなかったUSEN-ALMEXを選びました。
大手企業の中で単なる歯車になるよりも、小さな会社で力をつけて、将来は自分で何か事業を手掛けたいという思いがあったんです。当時のUSEN-ALMEXは社員300名ほどの規模で、本社は浅草にありました。下町の雰囲気が好きだったのも決め手の一つでしたね。
西畑:そんな長いキャリアを重ね、代表になられたわけですが、入社当時から社長になりたいという思いはあったのでしょうか?それとも自然な流れだったのでしょうか?
坪井さん:正直に言うと、若い頃は自分がUSEN-ALMEXの社長になるとは全く想像もしていなかったですね(笑)。当社の事業は医療機関や宿泊施設の心臓部とも言える基幹システムを担っており、非常に重責があります。そのため、最初から社長を目指すというよりは、まずは現場でしっかりと経験を積むことを重視していました。将来的には別の形でも事業に携わりたいという思いもありました。
社長就任に関しては、自ら手を挙げたというよりは指名を受けたもので、「釣り上げていただいた」という感じですね(笑)。でも、多くの方々の期待を背負った大役ですから、一旦引き受けた以上は全力で取り組んでいます。これまでの長年の経験を活かして、会社をさらに成長させていきたいという思いは誰よりも強いですね。
危機的状況から学んだ仲間の絆の価値
西畑:なるほど。この30年以上のキャリアの中で、苦労された時期もあったと思います。特にリーマンショック時は多くの企業が厳しい状況に置かれましたが、当時のことを振り返っていただけますか?
坪井さん:当時、私は30代中盤で東日本統括や副事業部長の立場にあり、確かにリーマンショック時は当グループも危機的状況でした。50社以上あったグループ会社が毎月のように売却されていき、当社も売却候補に上がっていました。「次はいつ自分たちの番が来るのだろう」という不安を抱えながらも、当時の立場として日々の業務を着実に行い、売上を確保し、部下を鼓舞し続けることくらいしか出来ず、やむを得ない賃金カットやリストラ、新製品開発への投資もままならない状況も経験しました。
最終的にグループ会社の中で生き残ったのはUSENとUSEN-ALMEXを中心に数社のみでした。そこから再生への道を歩み始めました。この困難を乗り越えられたのは、共に戦った仲間の存在があったからです。厳しい環境だからこそ人と人とのつながりが強くなり、その絆が支えとなりました。出会いと仲間こそが、私のビジネスマン人生における最大の財産だと思っています。
「一気通貫」の技術力で日本のホスピタリティを支える

自動精算機から予約システムまでー業界特化の強みを生かす戦略
西畑:そうした厳しい時代も乗り越えて今に至るわけですね。こういった経験は現在の事業にも活きていると思います。改めて、御社の事業内容についてお聞かせいただけますか?どのような分野に強みをお持ちなのでしょうか?
坪井さん:USEN-ALMEXは、グループの中でも「モノづくり」、つまりメーカー的な要素が強い会社です。当社は業界ごとに特化したアプローチを取り、それぞれの分野でナンバーワンを目指しています。
主に宿泊施設と医療機関の2つを主要市場としながら、ゴルフ場や温浴施設、クリニック、動物病院など他の分野にも事業を拡大しています。主力製品は自動精算機となりますが、どの分野においても業務効率化に貢献するさまざまなシステムを提供しており、単なる精算機メーカーとは一線を画した存在だと感じています。
西畑:なるほど、「モノづくり」を中心とした企業なんですね。他の精算機メーカーと比べて、御社ならではの強みはどこにあるのでしょうか?
坪井さん:大手の精算機メーカーは多く存在しますが、当社の強みは精算機だけでなく、その周辺の商品・サービスを一気通貫で提供できることにあります。
たとえば宿泊施設向けには、自動精算機に加えて、PMS(Property Management System:宿泊管理システム)、Webチェックインサービス、客室のインフォメーションサービス、カードキーなど幅広いソリューションを提供しています。医療機関向けには、受付機や待合表示システム、診察予約から支払手続きまでできるアプリなども手がけています。
このように特定業界に特化したうえで、自動精算機から派生するさまざまな商品・サービスを包括的に提供できる唯一無二の企業だと自負しています。
人手不足とインバウンド対応ーテクノロジーが解決する日本の課題
西畑:一気通貫のサービス提供は、顧客にとっても大きなメリットですね。御社のサービスを通して、どのような社会課題の解決に貢献されているのでしょうか?特に今の時代ならではの課題もあると思いますが。
坪井さん:宿泊施設では、インバウンドが増加する一方で人手不足が、また医療機関でも少子高齢化に伴う人手不足が重要な課題となっています。これらの課題はITやテクノロジーを活用して解決していくべきものと考えており、まさに当社は、時代のニーズに合った社会課題を解決できる絶好のポジションにいると自負しています。
課題解決の具体例を挙げると、他に先駆けてレジャーホテル業界に自動精算機を導入したことです。今では自動精算機での支払が主流の時代となりましたが、30年以上前は、フロントでの現金授受が一般的で、ホテル従業員による着服が常態化しており、対策を求めるホテルオーナーからの声が多く聞かれていました。自動精算機の導入により手作業による現金の取り扱いが不要になったことで不正問題が解消されただけでなく、ホテル利用者は明朗会計になったことに加え、チェックインからチェックアウトまで誰とも対面することなくホテルを利用できるという高評価も相まって、結果的に導入されたホテルの売上向上にも貢献することできました。社会課題に対応しつつ、顧客企業に感謝され、最終利用者の体験も向上させることができるビジネスに携われることは、私たちにとって大きなやりがいです。
「おもしろおかしく」働こうー京都の経営哲学を取り入れた企業文化

堀場製作所と京セラから学んだ人を大切にする経営
西畑:社会課題の解決に取り組まれているというお話、とても興味深いです。実際にそうした事業を推進していくには、社内の環境や文化も大切だと思います。USEN-ALMEXの社内はどのような雰囲気なのでしょうか?
坪井さん:USEN-ALMEXは創業当時から「人」を大切にする会社でした。その文化は現在でも引き継がれていて、社員の成長、働きがい、人間関係、社会貢献など、心の豊かさを大切にしている会社だと感じています。これらの要素が組み合わさることで会社へのエンゲージメントが高まり、結果として企業の成長に繋がっているのではないでしょうか。お客様に喜んでいただけるために何ができるか、お客様のもつ課題を自分事に置き換えて、熱く業務する社員も多いです。
また、グループ内には当社以外にも多種多様な商材を扱う事業会社が連ねていることから、そのメリットを活かして業務連携やコミュニケーションも活発で、ときには競争し、ときには協力し合う関係があります。この横のつながりこそがグループ全体の強みだと考えています。
そのような社風をもつ当社ですが、私が業務する上で大切にしてきたモットーは、いかに「おもしろおかしく」過ごせるか、です。
私は京都出身ということもあり、堀場製作所の「おもしろおかしく」という理念に共感しています。人生において仕事に費やす時間は非常に長いものです。その時間が不幸せなものであれば、人生そのものが不幸せになってしまう。だからこそ、ビジネスに関わる時間をいかに「おもしろおかしく」過ごせるか、つくられたレールや固定概念に囚われるのではなく、いろんなことにアンテナを張り柔軟に、純粋に吸収し、自分の中でいかに楽しみとワクワクを感じながら取り組めるかを大切にしています。
また、社長として、社員にも仕事に関わる時間を幸せな気持ちをもって取り組んでほしいという思いから、稲盛 和夫氏の「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という理念にも大変共感しており、経営指針のひとつとしています。「本当に社員を幸せにできているだろうか」と日々自問自答しながら職務を全うしています。
「決められたことをこなす人」は求めていないーチャレンジする社風
西畑:「おもしろおかしく」仕事をする、「従業員の幸福を追求する」といった理念に共感されているんですね。そういう価値観のもとで、実際にどのような人材を求めていらっしゃるのでしょうか?今の若い世代にも伝えたいことがあれば、ぜひお聞かせください。
坪井さん:当社はメーカーとしての側面も強く、大規模な商談も多いため、一人で完結できる仕事は少ないのが実情です。そのため、チームワークを大切にして、協力して大きな仕事を成し遂げられる人材を求めています。
同時に、チャレンジ精神を持ち、困難に直面しても諦めないことも重視しています。挑戦の過程で失敗することもあるでしょうが、そこで立ち止まらず、チャレンジし続ける精神を持った人物を求めています。単に決められたことをこなすだけでなく、既存の枠を超えて新しいことに挑戦する姿勢が大切です。USEN-ALMEXの既存事業を向上させていくのは勿論ですが、お客様の声や現場社員の意見を反映した新規ビジネスが生まれていかなければ、会社自体の成長も限られてしまうと考えています。
西畑:チャレンジ精神を持つ人材が重要なんですね。お話を聞いていると、坪井さんご自身もそういう姿勢で今までキャリアを積んでこられたのだろうなと感じます。では、今後どのような会社にしていきたいと考えていらっしゃいますか?
坪井さん:求める人材と同じですが、社員には「与えられた仕事をただこなす」のではなく、「自ら考えて主体的に行動できる人」になってほしいと思います。私自身も以前は与えられたノルマをこなす営業マンでしたが、主体的に行動するようになってから、人生がずっと充実し、楽しくなりました。
また、困難に直面したときは一人で抱え込まず、周囲のサポートを求める勇気も大切です。私自身、リーマンショック時も仲間がいたからこそ難局を乗り越えられました。私は「ついてこい」と言いながらも、実際についてきてくれた部下たちの存在があって今の自分があります。人と人とのつながりの大切さを忘れないでほしいですね。
2030年へ向けた挑戦ー次世代リーダーが描く「テクノホスピタリティ」の未来

エントリー制で未来の経営者を育成ー「我こそは」の精神を持つ社員たち
西畑:今後の会社の展望についてお聞かせください。
坪井さん:売上規模の拡大や社員数の増加に向けた目標を設定しています。そのために社員一人ひとりの成長が不可欠だと考えおり、昨年から「POOL制度」という次世代幹部や経営者を育成する人材育成制度をスタートさせました。
この制度はエントリー制を採用しており、eラーニング、テスト、面接、論文執筆などのプロセスを通じて、将来の幹部や経営者を育成するものです。嬉しいことに、この制度への応募者は予想以上に多く、「自分こそは」と思う意欲的な社員がミドル層やバックオフィス部門にも多数いることが分かりました。会社の幹部になりたい、会社を背負って立ちたいという強い意志を持った社員をさらに増やしていくことが、当社の未来につながると確信しています。私自身にとっても、次世代の代表を育てることは重要なミッションだと考えています。
AIとロボティクスで実現する「100年企業」への道
西畑:人材育成に力を入れられているんですね。御社のビジョンを支える「テクノホスピタリティを世界へ」という理念について、もう少し詳しく教えていただけますか?
坪井さん:「テクノホスピタリティを世界へ」という当社のミッションは、テクノロジーを駆使してホスピタリティ体験を向上させるという考え方です。AI、ロボティクス、IoTなどの最先端技術を製品やサービスに統合することで、さまざまな業界が直面している人手不足などの課題解決に貢献したいと考えています。
また、さまざまな業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援することも重視しており、特に医療機関向けには医療事務のDX推進に力を入れています。さらに、事業拡大と新たな市場開拓のために、さまざまな企業とのパートナーシップや協業も積極的に展開していく方針です。
USEN&U-NEXT GROUPの一員である強みを活かし、グループが持つ幅広い顧客ネットワークを通じて新たなニーズを発掘し、市場シェア拡大にも努めています。私たちは「100年続く企業」を目指し、持続可能性やESG投資原則も経営の重要な柱として位置づけています。
西畑:100年続く企業を目指していらっしゃるんですね。最後に、学生や若手社会人など、これからの時代を担う若い世代に向けて、メッセージをいただけますか?
坪井さん:若い方々には、何事にもチャレンジする精神を大切にしてほしいと思います。私の礎となっている「ラストマン」という日立グループの再生物語を描いた本があるのですがそこには、逃げずに課題に向き合い、リーダーシップを発揮することの大切さが描かれています。
人生にはさまざまな困難が訪れますが、「自分がラストマンとしてリーダーシップを発揮できるか」「逃げずに課題に向き合えるか」が問われる場面が必ず来ます。船長がタイタニックから最後まで降りなかったように、責任ある立場の人間には覚悟が必要です。困難な時こそ前を向き、仲間と共にチャレンジし続けることで、必ず道は開けると私は信じています。
法人名 | 株式会社USEN-ALMEX |
HP | https://usen-almex.jp |
設立 | 1966年6月28日 |
事業内容 | ・医療機関向け製品 ・ホテル・宿泊施設向け製品 ・レジャーホテル向け製品 ・ゴルフ場向け製品 ・アミューズメント・レジャー・サービス向け製品 |
採用情報 | https://recruit.usen-almex.jp |
※2025年3月19日時点の情報です。