【代表インタビュー】合同会社S.FARMS CEO 蛯名 洸

【熱狂ベンチャーナビ】合同会社S.FARMS_CEO_蛯名洸様

農業のイメージ改革を掲げる合同会社S.FARMSです。青森県の農家出身の蛯名洸CEOは、農業を継がず上京した後悔から、農業の可能性を広げる挑戦を始めました。若いメンバーで構成される同社は、「VEYNYU 青森ふじりんご×ライスミルク」や「ガーリック味噌」などの商品開発を手がけ、農家の想いを消費者に届けています。

都市部と農村部の距離が広がりつつある現代において、蛯名さんは「農業を身近な存在にし、その魅力を伝えていきたい」と語ります。熱量と主体性で多くの協力者を得ながら、30歳までに海外展開を目指す若き経営者の想いについてお伺いしました。

目次

プロフィール

合同会社S.FARMS 蛯名代表

合同会社S.FARMS

CEO 蛯名 洸

趣味

サウナ・温泉、靴磨き、ドライブ

尊敬する人

岩佐大輝さん(株式会社GRA代表)、古賀大貴さん(Oishii Farm Corporation CEO)

座右の銘

絶対は絶対ない

学生が読むべき本

「佐久間宣行のずるい仕事術」佐久間宣行

経営者におすすめの本

「キングダム」原泰久

人生で一番熱狂したこと

ゼロから今の事業をつくり、事業展開を見据えて商品開発をしていること。留学をしていたときに、色んな国の友達をつくってお互いの文化を伝え合ったりしたこと。

農業のイメージを変える、地方の魅力を伝える商品づくり

合同会社S.FARMS 蛯名代表

農業のイメージ改革を軸にした3つの事業展開

小川

まずは御社の事業内容についてお伺いします。 どのような分野に注力されているんでしょうか?

蛯名さん:現在、私たちは主に3つの事業を展開しています。最も注力しているのは商品開発事業で、その他にはブランディング事業や地方創生事業も行っています。私たちの軸は「農業のイメージ改革」です。農業を盛り上げるために何ができるかを考えた結果、手に取りやすい商品を通じて農家さんの想いを伝えることが最も効果的だと思い、商品開発事業を始めました。

私たちは都内で何度かポップアップイベントを開催し、そこで地方の野菜を使った商品を提供しています。お客様が「こんなにんにく味噌は初めて」と驚く反応を目の当たりにして、農業と縁がなかった方々にも関心を持ってもらえることを実感しました。こうした体験が、私たちが商品開発事業に力を入れる大きな理由です。

ターゲットを意識した商品開発へのこだわり

小川

商品開発に関してお聞きしたいのですが、どのようなお客様をターゲットにしていて、商品づくりで特にこだわっている点はありますか?

蛯名さん:ターゲットは商品ごとに異なりますが、たとえば「VEYNYU 青森ふじりんご×ライスミルク」は、健康意識の高い方々に向けて展開したいと考えています。

お米をベースにしているため、牛乳や豆乳にアレルギーがある方でも安心して飲める点が特徴です。また、添加物を使用していないので、お子さんにも安心して飲ませたいという親御さんにも喜ばれています。

VEYNYU 青森ふじりんご×ライスミルク

また、「ガーリック味噌」は、20代後半から30代のOLを中心とした女性向けの製品です。女性が手に取りやすいよう、コスメ製品を参考にしたデザインにこだわりました。50グラムの小瓶を採用することで気軽に試せるサイズ感となり、ギフトにも適しています。細部にまでこだわり、ネイルをしている女性でも開けやすい四角い瓶を採用し、りんごの皮を活用することでにんにくの匂いが残りにくい工夫も施しています。

ガーリック味噌

こうした細かな工夫の一つひとつが、実際に使う人の「ちょっと試してみたい」という気持ちや日常の使いやすさにつながると思っています。

農家出身の強みと20代チームの可能性

小川

御社ならではの強みや特徴はどんなところにあるんでしょうか? 他社とはどう差別化されていますか?

蛯名さん:当社の強みは、私自身が青森県の農家出身であることです。子どもの頃から祖父母の農作業を手伝い、土をいじりながら農業の基本を体で覚えてきました。この経験が農業への深い理解と感謝の気持ちを育み、今の事業の原動力になっています。

もう一つの大きな特徴は、メンバー全員が20代という若さです。農業は「レガシー産業」と呼ばれるほど伝統的な業界で、農家の平均年齢は68歳にも達しています。そんな分野で新しいイノベーションを起こすためには、多様な世代の視点が必要です。私たちのような若いチームだからこそ、従来の常識にとらわれない発想で農業に新しい風を吹き込み、業界全体を活性化できると信じています。

農家の想いを届ける、熱量と行動力で課題解決へ

農業に対する深い敬意と感謝の気持ち

合同会社S.FARMS 蛯名代表
小川

蛯名さんご自身は農家のご出身とお聞きしましたが、事業を進める上で大切にしている想いや価値観はどのようなものでしょうか?

蛯名さん:私たちの原動力は、農業に対する深い敬意と感謝の気持ちです。

青森の農家に生まれ育った私は、小さい頃から祖父母と一緒に土をいじり、農作業を手伝ってきました。しかし、上京する際に農業を継がなかったことが、ずっと心の引っかかりになっていました。当時、地方では農業が「安い」「汚い」「稼げない」という「3K」のイメージで語られることが多く、私自身もその影響を受けていたんです。

でも、一人暮らしを始めてみると、それまで当たり前に食べていた食事がどれだけ貴重なものか、そして第一次産業に携わる方々のおかげで私たちの生活が成り立っていることを痛感しました。その気づきが大きな転機となり、農業のイメージを変えたい、盛り上げたいという情熱に変わったんです。

今、私の祖母も80歳を超えてなお現役で農業を続けています。彼女のような方々が地方にはたくさんいて、日本の食を支えています。そういった方々が現役でいる今のうちに、少しでも農業に貢献できることをしたいんです。自分は28歳ですが、30歳までには会社を成長させて海外展開も実現させたいと考えています。

地元の素材と熱意ある人との出会い

小川

とても素晴らしい想いですね。それを具体的にどのように事業に反映させていらっしゃるんですか? 特に商品開発において、どんな工夫をされているのでしょうか?

蛯名さん:この想いを形にするため、まず青森県の農産物を活かした商品開発からスタートしました。実は青森には日本一のものがたくさんあるんです。にんにくは日本の生産量の6割が青森産ですし、りんごも有名ですよね。他にも長芋や菜の花なども実は日本一なんです。こういった地元の素材を使って、自分たち自身が「本気で美味しい」と思える商品をつくることにこだわりました。何度も試作を重ね、実績のない私たちに「一緒にやろう」と言ってくれる熱意ある人たちと出会うことができました。

商品を通じて農業の魅力を伝える上で大切にしているのは、お客様に「自分ごと」として感じてもらうことです。ただ他社に製造を委託した商品を販売するだけでは、なかなかお客さんの心には届きません。私たちは商品に込めた想いや、その背景にある農家さんのストーリーを丁寧に伝えることで、お客さんとの共感を生み出しています。

また、熱量の高い若手農家さんとの繋がりも大切にしています。特にJAに頼らず自分で直販している農家さんたちは、次世代の農業を担う情熱を持っています。そういった「キーマン」をみつけて、その周りの面白い農家さんたちとのネットワークを広げていっています。

農業界の課題は農家さんによってさまざまです。収入の低さに悩む人もいれば、後継者不足に頭を抱える人もいます。でも、都市部の人に話を聞くと、マイナスイメージどころか「そもそも自分と無関係」と感じている方が多いんです。まずはこの距離感を縮めて、農業を身近に感じてもらうことが、イメージ改革の第一歩だと考えています。

留学とキャリアの経験から生まれた創業への決意

小川

創業のきっかけについてもお聞きしたいです。蛯名さんが実際に会社を立ち上げるまでには、どんな経験や出会いがあったんですか?

蛯名さん:私は青森県の大学を卒業するまで地元で過ごしましたが、「東京でバリバリ稼いでやるぞ」という気持ちで上京を決意しました。最初はハウスメーカーの営業職として千葉で3年ほど働いたんですが、コロナ禍の影響で人に会えないのにノルマだけはあるという厳しい状況でした。

その経験が自分の将来を見つめ直すきっかけとなり、一度会社を辞めてマルタ共和国に半年間留学することにしました。そこでさまざまな国の友人たちと出会い、彼らが自分の仕事に誇りを持って楽しそうに語る姿に衝撃を受けたんです。それまでの私は「与えられた仕事をこなす」人生でしたが、彼らをみて「誰かの課題解決のために仕事がしたい」と強く思うようになりました

帰国後、ずっと引っかかっていた農業のことを考え始めましたが、何も知識がない状態で飛び込むよりも、まずは外部の知見を得ようと思いました。特にITの知識は今後必ず必要になると考え、ITベンチャーに入社し、2年ほどみっちりと現場経験を積みました。その後、いよいよ農業関連の会社を立ち上げることを決意しました。

立ち上げにあたっては、紹介で知り合った仲間たちと共に起業することになりました。私と長崎県のアスパラ農家出身のメンバー、神奈川出身で東京大学と大学院で光の研究をしていたメンバーの3人です。生まれも経歴も得意分野もまったく異なる3人ですが、同い年であることと「農業を変えたい」という強い想いで結ばれました。特に農業とは無縁だったメンバーも、私たちの熱い対話を通じて一緒にやりたいと言ってくれたんです。

このように、異なるバックグラウンドを持つメンバーが集まったことで、農家視点だけでなく、一般消費者の視点も取り入れた事業展開ができています。お互いの強みを活かし合える絶妙なバランスが私たちの強みだと思っています。

一人ひとりの強みを大切に、行動力で農業の未来をつくる

合同会社S.FARMS 蛯名代表

良い内側が良い商品を生み出す企業文化

小川

社内の雰囲気はどのような感じなのでしょうか? 若いメンバーが集まっているとのことですが、どんなコミュニケーションを心がけていますか?

蛯名さん:私たちは週に1回ミーティングをするんですが、必ず最初に「今週良かったこと発表」の時間を設けています。これは単なるアイスブレイクではなく、私たちの理念に深く関わることなんです。

私たちは「自分たちの内側が商品になって、事業に影響する」と考えています。私たちが楽しくないと、お客さんも楽しめないし、私たちが本気じゃないと、お客さんも本気で考えてくれない。だから社内の雰囲気づくりは本当に大切にしています。

ありがたいことに、メンバー同士の関係はとても良好で、プライベートでもお酒を飲みに行くような仲です。仕事においても、メンバーそれぞれの「得意なこと」に100%力を発揮してもらえるよう心がけています。人は不得意なことを延々とやらされるとモチベーションが下がりますよね。でも得意なことなら成果も出しやすく、好循環が生まれます。

たとえば、動画編集が得意な人にはその分野を任せたり、企画を考えるのが得意な人は企画に集中してもらったり。このように一人ひとりの強みを活かせる環境づくりを意識して、自分から「こうしたい!」と行動したくなるような雰囲気を大切にしています

パッションと主体性を持った人材への期待

小川

チームづくりに関してお伺いします。これから一緒に働く仲間には、どんな資質や姿勢を一番求めていますか? 経験やスキルよりも大切にしているものはありますか?

蛯名さん:一番求めているのはパッションですね。ただ「自分もパッション持ってます!」と言われてもピンときませんから、具体的に言うと、主体性のある人を求めています

私たちは「与えられた仕事をこなす」のではなく、「自ら考えて行動できる人」と一緒に働きたいんです。たとえば「宮城県のこの特産品が良いと思います」と意見を言うだけでなく、実際にその地域に足を運んで話を聞いたり、関係者とつながりをつくったりして、「こういう理由でおすすめです」と行動を伴った提案ができる人が理想です。意見を出すことも大切ですが、そこで終わらせない実行力が本当の主体性だと思っています

私自身、以前は与えられたノルマをこなす営業マンでしたが、主体的に動くようになってから人生がずっと楽しくなりました。周りの人たちも明るくなりましたし、自分から行動することで周囲に笑顔を届けられる人間になれたと感じています。

私たちの会社のミッションやビジョンに共感してくれる人はもちろん大歓迎ですが、違う視点を持った人も必要だと思っています。たとえば私は「攻め」のタイプですが、「守り」の視点を持つ人も会社には必要です。多様な考え方が集まることで、より良い事業ができると信じています。ただ、根本となる「農業を変えたい」という想いに共感してくれることだけは譲れない条件ですね。

経験の有無は問いません。自らの意志で行動できる、パッションと主体性のある人と一緒に農業の未来を切り拓いていきたいと考えています

合同会社S.FARMS 蛯名代表

売上目標と海外展開への野心

小川

最後に、これからの展望についてお聞かせください。今後どのような成長を目指していて、特に力を入れていきたい分野はどこでしょうか?

蛯名さん:中長期的には、直近2年以内に自社商品で年間売上1億円以上を目指します

これからも商品開発事業を軸に活動していきますが、特に力を入れたいのがインバウンドと海外展開です。そのため、最初から商品パッケージにはローマ字を取り入れるなど、海外展開を見据えた準備をしています。実際に外国人の方に食べてもらったところ、特にヨーロッパではガーリックをよく食べる文化があって、非常に良い反応をいただきました。完全無添加でつくっている点も海外市場では大きなアドバンテージになると感じています。

まずは国内で基盤を固め、次のステップとして外国人観光客向けの展開を考えています。たとえば、青森県に旅行に来た外国人がお土産として自国に持ち帰れるような販売場所の開拓を進めています。ターゲットは一般的な道の駅ではなく、少し高級感のあるアンテナショップです。私たちの商品価値をしっかり伝えられる場所で、価値に見合った価格で提供したいと考えています。

また、販路開拓のために関係人口を増やすことも重視しており、ビジネスコンテストや東京都主催のプログラムに積極的に参加し、戦略的にネットワークを広げています。インドネシアへの輸出実績がある企業とつながるなど、海外展開の足がかりをつくったりもしていますね。

直近では、青森県産のりんごと、江戸時代から続く添加物不使用の甘味料をベースにした国産フレッシュフルーツジュースのブランド「果汁堂」をリリース予定です。これも、国内外での展開を視野に入れた新しい挑戦となります。

私は現在28歳で、30歳までには海外展開を実現できるところまで会社を成長させたいという目標を持っています。青森の、そして日本の農産物の価値を世界に届けることで、農業に携わる方々に還元できる仕組みをつくっていきたいと思っています。

法人名合同会社S.FARMS
HPhttps://s-farms.com/
設立2024年8月30日
事業内容・商品開発事業
・プロモーション事業
・地方創生事業
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小川莉奈のアバター

編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護士から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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監修者

西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

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秋山翔一 - 熱狂ベンチャーナビ編集責任者

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新卒で商社に入社。その後WEBマーケティング支援を行う会社に転職。その後、繊維メーカーの役員を経て株式会社デジマケを創業。
年間500記事以上の監修を行っております。採用側の視点でサービスのファクトチェックや記事内容を精査しています。

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熱狂ベンチャーナビ編集部はインターンシップ・新卒就活・転職経験者で編成されております。20代~30代の幅広い年齢・職種やキャリアを持つメンバーが在籍しているため、就活・転職の苦しかった経験や成功体験を元に求職者に役立つ情報を発信いたします。

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