M&A業界の動向と展望とは?業務内容・年収・転職事情を徹底解説【2025年最新】

M&A業界の動向と展望とは?業務内容・年収・転職事情を徹底解説【2025年最新】

M&A業界は「高年収」「社会貢献性の高い仕事」として注目を集める一方で、実際の業務内容や働き方の厳しさについては十分に知られていません。

実際、華やかなイメージだけで転職を決めて後悔するケースが少なくないのがM&A業界の実情です。この記事では、最新の業界動向や統計データに加え、実際に業界で働く方々から聞いた現場のリアルな声をもとに、M&A業界の実態を包み隠さずお伝えします。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

M&A業界は確かに魅力的な業界ですが、華やかな部分だけでなく、地道な営業活動や厳しい成果主義の実態も正しく理解することが大切です。この記事では統計データと現場の生の声の両面から、転職前に知っておくべき情報を網羅的にお届けします

目次

M&A業界とは?市場規模19.6兆円、事業承継問題を解決する成長市場

M&A業界とは、企業の合併・買収を専門的にサポートする業界です。近年、経営者の高齢化や後継者不足を背景に、M&Aは事業承継の有効な手段として急速に普及しています。

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、企業の合併や買収を指します。株式譲渡、事業譲渡、会社分割、株式交換、合併など、様々な手法が存在し、広義では資本参加や合弁会社設立なども含まれます。

2024年の国内M&A市場は件数4,700件、金額規模19.6兆円に達し、いずれも過去最高水準を記録しました。特に注目すべきは、国内企業同士の取引が3,702件と前年比20.5%増となった点です。コロナ禍で一時的に減少したM&A市場は完全に回復し、さらなる成長軌道に乗っています。

参考:レコフデータ「M&A動向調査2024年」

M&A業界の仕組みは?仲介型とアドバイザリー型の2つのビジネスモデル

M&A業界で働く上で理解しておくべきなのが、業態による役割の違いです。大きく分けて「仲介型」と「アドバイザリー型」の2つのモデルが存在します。

M&A仲介会社は、売り手企業と買い手企業の間に立ち、中立的な立場で双方をまとめる役割を担います。両社から手数料を受け取り、円滑な取引成立を目指します。代表的な企業として、日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所などが挙げられます。

一方、FA(ファイナンシャルアドバイザー)は売り手または買い手のどちらか一方とのみ契約を結び、契約した側の利益最大化を追求します。PwCアドバイザリーやデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーなど、大手会計事務所系のファームが代表的です。

投資銀行部門では、M&Aアドバイザリーに加えて資金調達支援も行える点が特徴です。野村証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などのメガバンク系証券会社が該当します。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

仲介とFAの違いは、転職後の業務スタイルに大きく影響します。仲介は両社の調整役として動くため、バランス感覚が求められます。一方FAは、契約した側の代理人として強く交渉する場面も多く、より戦略的な思考が必要になります

M&A業界の職種は?コンサルタント・営業・アナリストなど4つの役割

M&A業界で働くといっても、職種によって業務内容は大きく異なります。主な職種とその役割を理解しておくことが、転職活動の第一歩です。

M&Aコンサルタントは、案件全体を統括する花形職種です。経営者との面談から契約締結まで、M&Aプロセス全体をマネジメントします。高い営業力、交渉力、調整力が求められ、財務知識も必須です。

インサイドセールスは、M&A案件の発掘を専門とするポジションです。テレアポやDM送付により経営者とのアポイントを獲得し、コンサルタントにパスする役割を担います。多くの企業では、インサイドセールスからキャリアをスタートし、実績を積んでコンサルタントへステップアップする流れが一般的です。

アナリティクスは、企業価値評価や資料作成を担当します。財務データの分析、バリュエーション(企業価値算定)、企業概要書の作成など、数字に強い人材が活躍できる領域です。公認会計士や税理士の資格保有者が多く在籍しています。

デューデリジェンス担当は、買収対象企業の調査を行います。財務、税務、法務、人事など多方面からリスクを洗い出し、買収判断の材料を提供する重要な役割です。会計士、税理士、弁護士などの専門家が担当することが多い職種です。

実際のキャリア事例として、営業職からインサイドセールスでM&A業界に入り、3年後にはコンサルタントとして大型案件を手がけるまでに成長したケースがあります。一方で、アナリティクス職からスタートし、専門性を深めて企業のM&A戦略担当に転身した事例も見られます。職種選びは、自分の強みと目指すキャリアパスを見極めることが重要です。

M&A業界が成長する理由は?後継者不足が深刻化、70歳超の経営者245万人

M&A市場が拡大している最大の要因は、中小企業における深刻な後継者不足問題です。この社会的課題がM&A業界の需要を支えています。

帝国データバンクの調査によると、全国の後継者不在率は53.9%に達しています。つまり、日本企業の半数以上が後継者を決められていない状況です。さらに深刻なのは、70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人にのぼり、そのうち約半数が後継者未定という事実です。

かつては親族内承継が主流でしたが、子どもが家業を継がないケースが増加しています。ここでM&Aが「第三の選択肢」として注目され、事業承継の手段として定着しつつあります。実際、事業承継・引継ぎ支援センター経由のM&A成約数は2023年に2,000件を超え、2011年の0件から大きく伸長しました。

参考:帝国データバンク「全国後継者不在率動向調査(2023年)」
参考:中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」

DX推進と業界再編もM&A需要を後押し

事業承継以外にも、M&Aが活発化する理由があります。それがDX推進と業界再編です。

多くの企業がデジタルトランスフォーメーションを進める中、IT人材やノウハウを持つ企業の買収ニーズが高まっています。自社でゼロからDX人材を育成するより、既にIT技術を持つ企業を買収する方が効率的だからです。

たとえば、2021年に実施された楽天と日本郵政の資本・業務提携は、日本郵政の全国ネットワークと楽天のデジタル技術を融合させる狙いがありました。このように、異業種間でのM&Aも増加傾向にあります。

また、市場縮小が進む業界では生き残りをかけた業界再編が加速しています。同業他社との統合により規模の経済を追求し、競争力を強化する動きです。2021年のココカラファインとマツモトキヨシの経営統合は、ドラッグストア業界再編の象徴的な事例でした。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

M&A市場の拡大は一時的なブームではなく、構造的な要因に支えられています。少子高齢化が進む日本において、事業承継問題は今後さらに深刻化します。つまり、M&A業界の需要は中長期的に続くと考えられます。

参考:楽天「日本郵政グループと楽天グループ、資本・業務提携に合意」

今後はどうなる?小規模M&Aとスタートアップ売却が成長領域

M&A市場の今後を見据える上で注目すべきトレンドが2つあります。それが小規模M&Aの増加とスタートアップのM&Aです。

従来、M&Aは大企業が中心でしたが、最近では個人事業主レベルの小規模案件も増えています。TRANBI、BATONZ、M&Aサクシードなどのマッチングプラットフォームの普及により、数百万円から数千万円規模の取引が活発化しています。

また、スタートアップ企業がイグジット戦略としてM&Aを選択するケースも増加傾向です。IPOを目指すだけでなく、大手企業の傘下に入ることで成長を加速させる選択肢が一般化しつつあります。

実際に、大手仲介会社から小規模M&Aに特化したベンチャー企業に転職し、年間成約件数を大幅に伸ばしたケースがあります。小規模案件は1件あたりの報酬は少ないものの、スピーディーに回転させることで高収入を実現できる点が魅力だという声があります。

業界別のM&A動向:IT・建設・医療・物流で活発化する理由とは?

M&Aが活発な業界とそうでない業界があります。業界によって抱える課題が異なるため、M&Aが行われる目的や頻度も変わってきます。転職先を選ぶ際、どの業界の案件を扱いたいかを考えることも重要です。

IT業界は成長戦略型M&Aが中心、異業種からの買収も活発

IT業界は、全業界の中で最もM&Aが活発な領域です。2010年から2019年まで右肩上がりで件数が増加し、他業界を大きく引き離しています。

IT業界でM&Aが活発な理由は、技術の進化スピードが速く、自社開発では追いつかないためです。新しい技術やサービスを持つ企業を買収することで、開発期間を大幅に短縮できます。また、慢性的な人材不足も背景にあり、優秀なエンジニアを確保する手段としてM&Aが活用されています。

注目すべきは、異業種からのIT企業買収が増加している点です。製造業、小売業、金融業など、あらゆる業界がDXを推進する中で、IT技術を内製化するためにIT企業を買収するケースが目立ちます。

参考:経済産業省「IT人材需給に関する調査」

建設業界は深刻な高齢化で事業承継型M&Aが急増

建設業界では、他業界以上に深刻な高齢化と人材不足が進んでいます。国土交通省のデータによると、建設業界の55歳以上の就業者は35.9%、29歳以下はわずか11.7%です。全産業平均と比較しても、極端に高齢化が進んでいることがわかります。

区分建設業界全産業平均
55歳以上の就業者35.9%31.5%
29歳以下の就業者11.7%16.4%

建設業界のM&Aは、事業承継問題の解決が主な目的です。後継者がいない地方の建設会社が、大手ゼネコンや地域の有力企業に事業を譲渡するケースが増えています。また、人材確保や技術承継を目的とした買収も活発です。

建設業界専門のM&Aコンサルタントの事例では、地方の優良建設会社が後継者不在で廃業寸前だったところを、同じ地域の別企業とマッチングさせて事業を存続させたケースがあります。地域経済を守るという社会的意義を強く感じる仕事だという声も聞かれます。

参考:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」

医療・介護業界は2025年問題で再編加速、後継者不在率61.8%

医療・介護業界では、2025年問題を背景にM&Aが活発化しています。2025年問題とは、団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護需要が急増する一方で、人材不足やサービス供給体制の限界が顕在化する問題です。

医療業界の後継者不在率は61.8%と、全業界の中でも特に高い水準です。個人経営のクリニックや中小規模の医療法人では、院長の高齢化に伴う承継問題が深刻化しています。

介護業界でも同様に、小規模事業者の統合が進んでいます。大手介護事業者が地域密着型の事業所を買収し、エリア展開を加速させる動きが顕著です。また、人材確保や介護報酬改定への対応を目的としたM&Aも増加しています。

参考:帝国データバンク「全国後継者不在率動向調査(2024年)」
参考:厚生労働省「医療・介護の現状と課題」

物流業界はコロナ禍でも成長、2009年52件→2020年91件

物流業界のM&A件数は、2009年の52件から2020年には91件まで増加しました。特筆すべきは、コロナ禍の2020年においても前年比で増加した点です。多くの業界がM&Aを控える中、物流業界は逆に活発化しました。

物流業界でM&Aが増加している背景には、EC市場の拡大による物流需要の急増があります。配送拠点の確保や配送ネットワークの拡充を目的とした買収が活発です。また、ドライバー不足への対応や、中小物流会社の後継者不在問題もM&Aを後押ししています。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

業界によってM&Aの目的が大きく異なります。IT業界は成長戦略、建設・医療は事業承継、物流は拠点確保が中心です。M&A業界への転職を考える際は、自分がどの業界の案件に興味があるか、社会的意義を感じられるかも重要な判断材料になります

M&A業界の主要企業は?大手4社で業界シェアの過半を占める構造

M&A業界への転職を考える上で、主要企業の特徴を理解しておくことは不可欠です。特に大手4社は圧倒的な存在感を持ち、業界全体のシェアの過半を占めています。

日本M&Aセンターは業界最大手、年間1,100件の成約実績

日本M&Aセンターは、M&A仲介業界のパイオニアであり、現在も業界トップの地位を維持しています。2024年3月期の成約件数は約1,100件、売上高は約440億円に達し、コンサルタント数は645名を擁します。

最大の強みは、全国700以上の会計事務所、300以上の金融機関との強固な提携ネットワークです。このネットワークを活かし、全国各地の案件を発掘できる体制が整っています。

組織力を活かしたワンストップサービスが特徴で、案件の発掘から成約後の統合支援まで、グループ内で完結できる体制を構築しています。業界最大手として安定した基盤を持ち、研修制度も比較的充実している点が魅力です。

M&Aキャピタルパートナーズは高収益体質で業界最高水準の報酬

M&Aキャピタルパートナーズは、業界内で最も高い収益性を誇る企業です。2025年9月期の売上高は224億円、経常利益78.7億円、成約件数248件を記録しました。

注目すべきは業界最高水準の報酬体系です。有価証券報告書によると、同社の平均年収は業界トップクラスの水準を維持しています。この高収入を実現できる理由は、直接提案型ビジネスモデルにあります。

M&Aキャピタルパートナーズは、銀行や会計事務所からの紹介に依存せず、コンサルタント自らが企業に直接アプローチして案件を発掘します。これにより、紹介手数料が不要となり、高い粗利率を実現しています。

1人当たりの生産性は業界トップクラスで、個々のコンサルタントの能力が極めて高いことで知られています。ただし、その分求められるレベルも高く、実力主義の色が強い企業文化です。

ストライクは会計士創業で財務分析に強み

ストライクは公認会計士が創業した企業で、財務アドバイザリーの精度の高さが強みです。2025年9月期の成約件数は275件、売上高203億円、コンサルタント数452名と、着実に規模を拡大しています。

会計士・税理士とのネットワークが強く、財務面での信頼性が高い点が特徴です。最近では、クロスボーダーM&AやFA業務、PMI支援にも注力し、総合コンサルティング型M&A企業への転換を進めています。

堅実な企業カラーが好まれる傾向にあります。ガツガツした営業スタイルというより、丁寧な対応で信頼を得るアプローチが主流です。

M&A総合研究所はAI活用で急成長、効率的な働き方を実現

M&A総合研究所は、AI・DXを徹底活用することで急成長を遂げた新興企業です。年間成約件数は約242件で、急速に業界での存在感を高めています。

最大の特徴は、完全成功報酬制を採用しながらも、AIやデジタルツールを活用して業務を効率化している点です。これにより、平均成約期間は他社の半分程度に短縮され、コンサルタントの生産性が飛躍的に向上しています。

働き方改革にも積極的で、残業時間は月30時間程度と業界内では短い水準です。労働集約型のビジネスモデルから脱却し、テクノロジーの力で稼げる環境を実現している点が注目されています。

M&A業界の仕事内容は?地道な営業から始まる華やかなイメージとのギャップ

M&A業界の仕事について、多くの人が抱くイメージは「大型案件の交渉」「経営者との戦略的な議論」といった華やかなものです。しかし実際の業務は、地道な営業活動から始まります。

最初の壁は?テレアポとDMで経営者とのアポイント獲得

M&A仲介会社の業務は、端的に言えば「会社を売りたい人」と「買いたい人」をつなぐ営業です。そのスタートラインは、経営者とのアポイント取得です。

多くの企業では、飛び込みの電話やダイレクトメールで経営者に面談を打診する地道な開拓活動が日常業務の大部分を占めます。1日に何十件もテレアポをかけ、わずか数件のアポイントを獲得できれば上出来という世界です。

私が支援したある転職者は、前職の商社で培った営業力を活かしてM&A業界に入りましたが、最初の3ヶ月間は全くアポイントが取れず苦労したと話していました。商材を売る営業と、会社という人生をかけた決断を迫る営業では、難易度が全く異なると痛感したそうです。

また、経営者との面談が取れても、そこから案件化するまでには長い時間がかかります。M&Aは人生最大の決断であり、経営者も簡単には決められません。何度も足を運び、信頼関係を築き、タイミングを見極める忍耐力が求められます。

M&A業界の1日のスケジュール例

09:00 出社・メールチェック
10:00 経営者へのテレアポ・DM送付(30〜50件)
13:00 クライアント企業との面談
15:00 買い手候補企業へのアプローチ
17:00 案件資料作成・企業概要書の更新
20:00 契約書のドラフト確認
22:00 退社(案件状況により深夜になることも)

案件が動くとどうなる?忙しさが極端に偏る業界特性

アポイント獲得の壁を越え、案件が本格的に動き出すと、今度は激務が待っています。買い手候補との調整、契約条件の交渉、デューデリジェンスの対応など、やるべきことが一気に増えます。

案件が進行中は長時間労働になりがちで、逆に案件が止まっている時期は比較的早く帰れる日もあり、忙しさは極端に偏ります。業界では「帰れるときに帰っておいた方がいい」という言葉があるほどです。

さらに厄介なのが、案件の予測不能性です。別の案件にアサインされた途端、最初の案件が急に動き出して複数案件を同時に抱えることになる、といったことも起こり得ます。このような状況への対応力が求められる業界です。

ただし、こうした働き方は近年見直しが進んでおり、M&A総合研究所のようにAI・DXを活用して業務効率化を図り、残業時間を月30時間程度に抑えている企業も出てきています。企業選びの際は、働き方改革への取り組み状況も確認することが重要です。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

M&A業界は案件の性質上、繁閑の差が激しいのが実情です。ただし、長時間労働が当たり前という文化は徐々に変わりつつあります。転職の際は、その企業の労働環境や働き方改革への取り組みを確認することをおおすすめします。

新人の教育は?実務重視のOJTスタイルが主流だった業界

M&A業界の厳しさを象徴していたのが、新人教育のスタイルです。以前は、手厚い研修期間を設けず、入社後すぐにテレアポや案件開拓の実務に携わるOJT中心の育成が一般的でした。右も左も分からないうちから実戦投入されるため、精神的・体力的な負荷が大きかったという声も聞かれます。

ただし、近年は状況が変わりつつあります。M&A業界の競争激化に伴い、人材育成に力を入れる企業が増えており、体系的な研修プログラムを整備する動きが見られます。特に大手企業では、数ヶ月にわたる研修期間を設け、M&Aの基礎知識から実務スキルまで段階的に学べる環境を整えているケースもあります。

それでも、M&A案件の増加に伴い現場が忙しく、「案件に関わりながら実践で覚える」というスタイルが中心であることに変わりはありません。上司も自分の案件を抱えているため、手取り足取り教えるというより、自ら学び、質問する姿勢が求められます。

ただし、裏を返せば若手のうちから大きな裁量を持って仕事ができる環境とも言えます。自分で考え、行動し、失敗から学ぶことで、急速に成長できる点は大きな魅力です。実際、積極的にいろんな案件に顔を出し、「あいつは使える」と認められた若手ほど、次々とアサインを獲得して実力を高めていきます。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

以前は「いきなり実戦」というスタイルが主流でしたが、最近は人材育成の重要性が認識され、研修制度を充実させる企業が増えています。ただし企業によって差が大きいため、転職の際は研修体制について必ず確認することをおすすめします

M&A業界の年収は本当に高い?平均と中央値の大きなギャップが実態

M&A業界が注目を浴びる最大の理由の1つが「高年収」です。しかし、この高年収には大きな落とし穴があります。それが極端な二極化です。

求人広告の「平均年収2,000万円超」の裏側とは?

M&A業界の求人広告を見ると、「20代で年収1億円目指せます」「平均年収2,500万円以上」「入社2年目以降はほとんど成約」といった夢のようなフレーズが並びます。実際に、大手M&A仲介会社の有価証券報告書を見ると、平均年収1,000万円超、企業によっては2,000万円超という数字が記載されています。

しかし、この平均年収は一部のトップセールスが数千万円を稼ぎ出すことで押し上げられた数字であり、実際の中央値は500万円前後という企業もあります。

実際に、M&A業界の年収に幻滅して転職を後悔するケースは少なくありません。前職で年収800万円あったものの、M&A仲介会社への転職時に年収360万円まで下げることになり、「3年で1,000万円超える」という説明を信じて入社したものの、2年経っても成約ゼロで基本給のみという状況に陥った事例もあります。

給与体系はどうなってる?基本給は月30〜35万円、成果報酬型の仕組み

M&A仲介各社の給与体系は、どこも「基本給+インセンティブ(歩合)」となっています。基本給は月30〜35万円程度、年収ベースで360〜420万円ほどです。賞与も年2回の固定ボーナスではなく、成約に応じた成果報酬がボーナス代わりです。

つまり、成果を出さない限り、年収は在籍年数に関係なく上がらない仕組みです。30代でも40代でも、成約ゼロなら年収360万円のままということもあり得ます。

一方で、成約さえできれば歩合で大きく稼げるのも事実です。1件成約すれば数百万円、大型案件なら1,000万円以上のインセンティブが入ることもあります。年間5件以上成約できるコンサルタントになれば、年収3,000万円超も現実的です。

M&A業界の年収シミュレーション

ケース基本給インセンティブ年収
1年目・成約0件360万円0円360万円
3年目・年間2件成約360万円1,200万円1,560万円
5年目・年間5件成約360万円3,000万円3,360万円

業態で年収は変わる?仲介・FA・IBDで特徴が異なる

M&A業界の年収は、業態によっても大きく異なります。

M&A仲介会社は完全成果報酬型が多く、年収の振れ幅が最も大きい業態です。トップセールスは数千万円から億単位で稼ぐ一方、成果が出ない人は基本給のみという二極化が顕著です。

投資銀行(IBD)は、固定給が比較的高く設定されており、新入社員でも年収600〜800万円程度からスタートします。成果次第でボーナスが上乗せされ、数年後には年収2,000万円超も狙えますが、その分激務です。外資系投資銀行では、年収数千万円から億に届くこともありますが、プライベートの犠牲も大きいと言われています。

FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)は、投資銀行ほどではありませんが、仲介会社より安定的な給与体系です。Big4系FASでは、マネージャークラスで年収1,000万円超、シニアマネージャー以上で1,500万円超が目安です。

実際、業界では「月収100万円超」の若手がいる一方で、「半年で退職しました」という人も少なくありません。まるでオーディションのように一握りが勝ち残る世界であり、業界内では「営業バブル」と呼ぶ声もあります。見かけ以上に実態は厳しいという意味です。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

M&A業界の年収は「ハイリスク・ハイリターン」と表現されますが、まさにその通りです。高収入を狙える可能性がある一方、成果が出なければ厳しい現実が待っています。安定志向の強い方には向かない給与体系だと言えるでしょう。

M&A業界で成功する人の特徴は?5つの共通点

M&A業界は厳しい世界ですが、確実に成果を出し続けている人たちには共通点があります。私がこれまで見てきた成功者の特徴をまとめました。

1. 結果に対してストイックに追求できる

M&A業界で成功している人の最大の共通点は、結果に対する強いこだわりです。クライアントの期待に応えるため、具体的な成果を追求し、プロジェクトを成功に導くことに全力を注ぎます。

M&Aコンサルタントにとって、成果とは「成約」です。どれだけ頑張っていても、どれだけ経営者と良い関係を築いても、最終的に成約に結びつかなければ評価されません。このシビアな現実を受け入れ、結果を出すために何をすべきか常に考え続けられる人が生き残ります。

高い目標を設定し、それを達成するための計画性や忍耐力を持つことで、複雑な案件や困難な状況においても冷静に対応し、最適なソリューションを提供できます。

2. 知的好奇心が強く、学び続けられる

M&A業界では、常に新しい情報やトレンドに敏感でいる必要があります。業界動向、法改正、税制変更、各業界の市場環境など、幅広い知識をアップデートし続けなければなりません。

知的好奇心が高い人は、最新の情報を積極的に収集し、クライアントに最適なソリューションを提供できます。また、異なる業界の知識を持つことで、独自の視点から価値あるアドバイスができるようになります。

実際の成功事例では、毎朝1時間早く出社して業界ニュースをチェックし、気になる企業の決算資料を読み込む習慣を持つコンサルタントがいます。この習慣が、経営者との会話で深い議論ができることにつながり、信頼獲得に結びついたといいます。

3. タフなメンタルと圧倒的な行動量

M&A業界は、断られることの連続です。100件テレアポして、アポイントが取れるのは数件。10社面談して、案件化するのは1〜2社。そこから成約に至るのはさらに一握りです。

この現実の中で成果を出すには、失敗を恐れず挑戦し続けるタフなメンタルが不可欠です。断られても、案件が破談になっても、すぐに次に向かって行動できる人が結果を出します。

成功している人の多くは、圧倒的な行動量で差をつけています。人の2倍テレアポし、2倍訪問し、2倍提案する。この地道な積み重ねが、最終的に大きな差を生みます。

4. 高いコミュニケーション能力と交渉力

M&Aでは、経営者、買い手企業、弁護士、公認会計士、税理士など、複数の関係者と調整しながら進める必要があります。それぞれの立場や利害を理解し、Win-Winの関係を築ける人が成功します。

特に重要なのが、経営者の本音を引き出す力です。M&Aは経営者にとって人生最大の決断であり、表面的な会話だけでは本当のニーズは見えてきません。信頼関係を構築し、経営者が抱える不安や悩みを聞き出せるコミュニケーション能力が求められます。

5. 前職で営業実績がある

実は、M&A業界でうまくいっている人の多くは、元々証券会社や銀行、保険や不動産の営業でバリバリ成果を出していた人たちです。未経験からいきなり飛び込んでも活躍するのは簡単ではなく、営業・金融の基礎力を持つ人ほど順応しやすい業界です。

法人営業の経験、特にソリューション型営業の経験がある人は、M&A業界でも強みを発揮します。顧客の課題を聞き出し、最適な提案をして、長期的な関係を築くというプロセスは、M&Aの営業と共通しているからです。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

M&A業界で成功するためには、営業力と専門知識の両方が必要です。ただし、最初から全てを備えている必要はありません。学習意欲とタフなメンタルがあれば、経験を積みながら成長できる環境です

未経験からM&A業界に転職できる?入口は広がったが生き残るのは別問題

近年、M&A業界は未経験者の採用を積極化しています。以前は「高学歴でないと入れない業界」というイメージがありましたが、現在は門戸が広がり、「ちょっと興味ある」程度でも選考を受けられるようになりました。

採用ハードルは下がったが「入社=成功」ではない

M&A仲介各社は新卒採用・未経験採用を拡大しており、有名大学でなくても最終面接まで行けて内定が出るケースが増えています。市場拡大に伴う人材不足が背景にあり、各社とも積極的に人材を確保しようとしています。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。「誰でも入れる」ことと「生き残る」ことはまったく別問題だからです。

大量採用・大量離職が実態であり、新卒でM&A仲介に入った人の多くが1年以内に辞めてしまうというデータもあります。内定がゴールではなくスタートであり、その先で結果を出せなければ厳しい現実が待っています。

私がこれまで相談を受けた中で、「入社前のイメージと全く違った」と後悔する方を何人も見てきました。ある方は、「経営者と戦略的な議論をする仕事」だと思って入社したら、実際は1日中テレアポをかける日々で、理想と現実のギャップに耐えられなかったと語っていました。

未経験者が直面する3つのギャップとは?

未経験でM&A業界に入った人が直面する主なギャップは以下の3つです。

1. 全業務をいきなり任されるプレッシャー

多くの企業では、新人に対しても初日からテレアポから契約締結まで任せます。「新人研修で基礎を学んで段階的に業務を任される」という想像をしていると、大きなギャップに戸惑います。

2. 成果が出るまで評価されない厳しさ

成果主義の業界では、結果がすべてです。どれだけ頑張っていても数字に結びつかなければ評価されません。新人のうちは分からないことだらけでもがくものですが、忙しい先輩たちは手取り足取り教える余裕がなく、「成果ゼロが続くと基本給のみ、インセンティブもゼロ、お金もやる気も削られていく」という悪循環に陥りがちです。

3. 経営者相手の営業の難しさ

M&Aは「会社」という巨大な商品を扱い、相手は経営者です。保険や車の営業よりハードルが高いのは想像に難くありません。一朝一夕に契約が取れるものではなく、簡単には成果が出ない点で他の営業職と大きく異なります。

転職成功のための3つの準備

未経験からM&A業界に転職して成功するためには、徹底的な準備が必要です。

1. 業界・企業研究の徹底

M&A業界の仕組み、各社の違い、業務内容、働き方など、可能な限り情報を集めましょう。企業の有価証券報告書、IR資料、業界ニュース、転職口コミサイトなど、あらゆる情報源を活用します。

実際に、消防士からM&Aアドバイザーに転職した方は、営業未経験ながら「誰よりも徹底して準備」することで選考を突破しました。与えられた課題企業の有料データを取り寄せ、業界のM&A事例を集め、仮説を立ててプレゼン資料を作成するなど、人一倍の努力を積んだそうです。

2. M&A関連の知識習得

M&Aの基礎知識、企業価値評価の考え方、財務諸表の読み方など、最低限の知識は入社前に身につけておくべきです。

書籍名学べる内容
『M&A実務のすべて』M&Aの全体像と実務の流れ
『事業承継・M&Aの実務』事業承継型M&Aの特徴と進め方
『企業価値評価の実務』バリュエーションの基礎知識
『デューデリジェンスの実務』DD(買収前調査)の実践的手法
『M&A仲介会社のすべて』M&A仲介ビジネスの仕組み

また、M&Aエキスパート認定資格、日商簿記2級以上などの資格取得も検討する価値があります。実務で必須ではありませんが、知識習得のプロセスと、学習意欲の証明になります。

参考:日本M&Aアドバイザー協会「M&Aエキスパート認定制度」

3. 自分の強みの棚卸しと志望動機の明確化

前職での営業経験、交渉経験、プロジェクトマネジメント経験など、M&A業界で活かせる強みを整理しましょう。また、「なぜM&A業界なのか」「なぜその会社なのか」を深く掘り下げておくことが重要です。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

未経験からのM&A業界転職は、決して不可能ではありません。ただし、入社後の厳しさを理解した上で、「それでも挑戦したい」という強い覚悟が必要です。生半可な気持ちで入ると、1年以内に辞めることになりかねません。

M&A業界のキャリアパスは?業界内外で選択肢が広がる

M&A業界でのキャリアは、一つの会社に留まる必要はありません。実力をつければ、業界内外で様々なキャリアパスが開けます。

オリジネーションからエグゼキューションへのスキル拡大

M&A業界でのキャリアステップの王道は、案件発掘(オリジネーション)から始めて、徐々に交渉・契約締結(エグゼキューション)の経験を積んでいく流れです。

私が支援した転職者の中に、メガバンクからベンチャー系FAに転職した方がいました。その方は、「まずは営業出身の自分の強みを活かしてオリジネーションで付加価値を出し、長期的には一人で案件の獲得からエグゼキューションまで自己完結できるよう成長していきたい」と目標を語っていました。

最初は得意分野に注力しつつ、ゆくゆくは案件を丸ごと回せる存在になるというステップアップ像は、M&A業界で王道のキャリアパスと言えます。

業界内での転職は活発?実力次第で選択肢が広がる

M&A業界は人材の流動性が高く、実績を積めば他社から引き合いがかかったり、ヘッドハントされるチャンスがあります。

Big4系FASでは、業務が似ているため他のFASへ転職する人も多く、「4社すべて制覇した人もいる」ほどです。M&A仲介からFAへ、FAから投資銀行へ、といった業態を跨いだ転職も珍しくありません。

それぞれの業態で経験を積むことで、M&Aのあらゆる側面を理解し、より高度な案件にチャレンジできるようになります。

企業側のM&A担当やCxOへの転身も可能

M&A業界での経験を活かし、事業会社のM&A戦略担当やCFO、経営企画部門に転身するキャリアパスもあります。

M&A仲介やFAで培った企業価値評価のスキル、交渉力、プロジェクトマネジメント能力は、事業会社でも高く評価されます。特に、積極的にM&Aを行っている企業では、M&A業界出身者が重宝されます。

実際の転職事例では、M&A仲介会社で5年間経験を積んだ後、上場IT企業のM&A戦略担当マネージャーに転身したケースがあります。年収は仲介時代より下がったものの、ワークライフバランスが改善し、長期的なキャリア形成を見据えた選択だったという声があります。

独立・起業という選択肢

M&A業界で実績と人脈を築いた後、独立してM&Aアドバイザーとして活動したり、自ら事業を立ち上げる人もいます。

ある成功者は、「将来的に譲り受けた企業の経営に入るか、自分で事業を立ち上げるか、”仲介のその先”を見据えている」と語っていました。M&A業界は経営者と接する機会が多く、ビジネスの本質を学べる環境です。この経験を活かして、自ら経営者側に回るという選択も魅力的です。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

M&A業界でのキャリアは、実力次第で大きく広がります。業界内でステップアップする道、事業会社に転じる道、独立する道など、選択肢は豊富です。ただし、どの道を選ぶにしても、まずは目の前の案件で成果を出すことが大前提です

失敗してもやり直せる?遠回りも有効なキャリア戦略

もしM&A業界で一度つまずいても、キャリアのやり直しは可能です。「M&Aという選択肢はいつでも戻れる。むしろ経験を積んでからの方がうまくいく可能性は高い」という声もあります。

実際、一度他業界で営業経験を積んでから再チャレンジする人もいます。ある方は、最初M&A業界への転職活動で書類選考が通らず、「他業界で営業経験を積んでからM&Aへ」という道も検討しました。それでも勉強を続け、最終的に「やっぱりこの業界に行きたい」という思いで直接挑戦して内定を獲得しています。

遠回りに見えても別分野で実力をつけてから挑むルートや、一度失敗しても経験を糧に再挑戦する道もあります。長期的な視点でキャリアを築くことができるのがM&A業界の特徴です。

M&A業界の職場環境は?ベンチャー系はフラット、大手は安定志向

M&A業界といっても、企業規模や成り立ちによって職場環境は大きく異なります。自分に合った環境を選ぶことが、長く活躍するための鍵です。

ベンチャー系・独立系はフラットで意思決定が速い

従業員数十名規模のベンチャー系や独立系ファームでは、上下の風通しが良くフラットな文化を強調する声が目立ちます。

メガバンクからFAに転職した事例では、「M&A業界はもっと殺伐としているイメージだったが、実際は全く違った。想像以上にフラットで自由な雰囲気に驚いた」という声があります。社長やパートナーとも直接やり取りでき、アイデアをぶつけたり相談できる環境が整っており、「煩雑な社内調整やお作法への対応に追われた前職と比べ、前向きな仕事に没頭できる今の環境は非常に快適」という評価も聞かれます。

意思決定のスピードも速く、提案がすぐに採用され案件として動くダイナミズムがあるため、堅苦しい社内手続きより現場目線の仕事に集中できる開放感が魅力です。

大手・銀行系は組織力と安定感が強み

一方、銀行系や大手系列のM&A部門では、組織としての安定感がある反面、「母体が大きいぶんスピード感や自由度に限界を感じた」という意見もあります。

大手ではどうしても稟議や調整に時間がかかる場面が多く、裁量が限定されがちです。しかし、その分研修制度が充実していたり、ブランド力を活かした大型案件に携われたりというメリットもあります。

ある方は、銀行系ブティックから独立系の企業に移った理由を、「もっと柔軟で意思決定の早い環境を求めて」と語っていました。大手では稟議や調整に時間がかかり、やりたい施策をすぐ試せない点が合わなかったそうです。

人間関係はどう?プロフェッショナルな距離感と自立した文化

M&A業界の職場では、成果主義ゆえのシビアさとプロフェッショナルな距離感があります。「良くも悪くも人間関係が希薄な部分がある」という声もあります。

皆それぞれプロ意識が高く自立しているため干渉しすぎない風土とも言えますが、裏を返せば新人のうちは自分から積極的に顔を売りに行かないと放っておかれる可能性があります。ただし、「基本的には人も良く、きちんと教えてくれる上司も比較的多い」とのことで、頼めば助けてくれる風土はあるようです。

昔ながらの徒弟制度のような濃密な指導というより、聞けば教えてくれるが自立も求められるというドライさと温かさが混在した人間関係と言えます。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

職場環境は企業によって大きく異なります。ベンチャー系のスピード感を求めるのか、大手の安定感を重視するのか、自分の志向に合わせて選ぶことが重要です。転職前に必ず社員と面談し、実際の雰囲気を確かめることをおすすめします

M&A業界で使われる専門用語は?主要な用語を理解しておこう

M&A業界に入ると、多くの専門用語が飛び交います。基本的な用語は入社前に理解しておくことで、業務への適応がスムーズになります。

M&A手法に関する基本用語

合併

合併とは、複数の企業が一体となって新たな組織を形成することです。吸収合併と新設合併の2種類があります。吸収合併は、ある企業が他の企業を吸収して統合する形態で、吸収される企業は消滅します。新設合併は、複数の企業が合併して新たに設立される企業を形成する形態です。

買収

買収とは、他社の経営権や事業を取得することです。主な手法として、株式譲渡、事業譲渡、株式交換があります。株式譲渡は、株主が保有する株式を他の個人や法人に売却することで経営権を移転します。事業譲渡は、会社の全部または一部の事業を別の会社に譲渡する手法です。

資本提携

資本提携は、複数の企業が資本関係を築き、相互に利益を享受するための戦略的なパートナーシップです。合弁会社は、複数の企業が共同で出資して新会社を設立する形態を指します。

M&Aプロセスに関する用語

デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンス(DD)とは、買収前に実施する詳細調査です。財務DD、税務DD、法務DD、人事DD、ビジネスDDなど、多方面から売り手企業を調査し、リスクや問題点を洗い出します。

バリュエーション

バリュエーションは、企業価値評価のことです。DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)、マルチプル法(比較会社分析)、純資産法など、複数の手法を用いて対象企業の適正価値を算定します。

PMI(Post Merger Integration)

PMI(Post Merger Integration)は、M&A成約後の統合プロセスです。経営統合、業務統合、システム統合など、買収した企業をスムーズに統合し、シナジー効果を最大化するための活動を指します。

M&A契約に関する用語

NDA(Non-Disclosure Agreement)

NDA(Non-Disclosure Agreement)は、秘密保持契約です。M&Aの検討段階で、企業情報を第三者に漏らさないことを約束する契約書です。

LOI(Letter of Intent)

LOI(Letter of Intent)は、意向表明書です。買い手企業が売り手企業に対し、買収の意向と希望条件を示す書類です。

基本合意書

基本合意書は、M&Aの基本的な条件について双方が合意したことを示す書類です。独占交渉権、デューデリジェンスの実施、守秘義務などが記載されます。

DA(Definitive Agreement)

DA(Definitive Agreement)は、最終契約書です。M&Aの全ての条件を確定し、法的拘束力を持つ契約書です。株式譲渡契約書、事業譲渡契約書などがこれに該当します。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

M&A業界では多くの専門用語が使われますが、実務を通じて自然と身につきます。ただし、最低限の基礎用語は入社前に理解しておくと、研修や初期の業務での理解度が大きく変わります。

M&A業界は社会貢献性と高収入を両立できる可能性がある

M&A業界は、中小企業の事業承継問題という社会的課題の解決に貢献しながら、高収入を実現できる可能性を持つ魅力的な業界です。2024年のM&A市場は件数4,700件、金額規模19.6兆円に達し、今後も成長が見込まれています。

しかし同時に、厳しい実力主義の世界でもあります。地道なテレアポから始まる営業活動、案件進行時の激務、成果が出なければ評価されない給与体系など、華やかなイメージとは異なる現実があります。年収も二極化が激しく、トップ層は数千万円を稼ぐ一方、中央値は500万円前後という企業もあるのが実態です。

未経験からのM&A業界転職は、決して不可能ではありません。採用ハードルは下がっており、門戸は広がっています。ただし、入社後の厳しさを理解した上で、「それでも挑戦したい」という強い覚悟が必要です。

この記事で紹介した業界動向、業務内容、年収の実態、現場のリアルな声を参考に、自分の適性や覚悟を見極めてください。それでもなお「挑戦したい」と思えるなら、徹底的な準備と強い意志を持って一歩を踏み出すことで、大きな成果と充実感を得られる可能性があります。

西畑 大樹 / 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

M&A業界への転職は、キャリアの大きな転換点になります。良い面も厳しい面も含めて正しく理解した上で、自分のキャリアビジョンに合っているかじっくり考えてください。準備を十分に行えば、未経験からでも活躍のチャンスは必ずあります。


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編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護師から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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監修者

西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

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秋山翔一 - 熱狂ベンチャーナビ編集責任者

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新卒で商社に入社。その後WEBマーケティング支援を行う会社に転職。その後、繊維メーカーの役員を経て株式会社デジマケを創業。
年間500記事以上の監修を行っております。採用側の視点でサービスのファクトチェックや記事内容を精査しています。

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執筆者情報

熱狂ベンチャーナビ編集部はインターンシップ・新卒就活・転職経験者で編成されております。20代~30代の幅広い年齢・職種やキャリアを持つメンバーが在籍しているため、就活・転職の苦しかった経験や成功体験を元に求職者に役立つ情報を発信いたします。

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